戦翼のシグルドリーヴァ Rusalka 感想
こんばんは、みなもです。
めちゃくちゃ久しぶりに感想ブログ書きます。
今回は現在絶賛放映中のオリジナルアニメ作品『戦翼のシグルドリーヴァ』の前日譚にあたる小説『戦翼のシグルドリーヴァ Rusalka』(全2巻)を爆読し、色々吐き出したい気持ちが抑えられなくなったのでここに書き残しておこうと思います。
まずはアニメ見て「アズズたむ萌え~」とか「宮古たむにこっぴどく振られたい」とかとか言ってるオタクたちに一言。
「読みなさい」
以上。
【Emergency】
以下、アニメ本編の根幹に関わるものを含む関わる大量のネタバレを含みます。未読の方は森へお帰り。
時系列
まずは復習も兼ねて物語を整理します。
〇上巻
- 【戦翼の日】【ファースト・ワルキューレ】の初陣。多くの犠牲が出る中でルサルカ・エヴァレスカ生還。
- ルサルカ、基地(地名記載なし?)にてエイミーと邂逅。
- 【セカンド・ワルキューレの筆頭】、【ファースト】率いる実験小隊への参加を拒否。
- 【パンドラの悲劇】【ラミアの奇跡】
- 【傷物の赤】、翼を畳みオペレーターとして戦闘を経験。
- 【酒乱】、市街回復視察の果てに大泥酔し営倉入り。アレハンドロ・オストレイと邂逅。
- 【小隊戦術の母】、ハンブルク基地にてナタリー・チェイス、アルマ・コントーロ、シャノン・スチュアートらと邂逅。
- 【ハンブルク基地攻防戦】【戦翼の再来】
- 【シグルドリーヴァ】結成。ルサルカ、ナタリー、アルマ、シャノンらが抜擢。
〇下巻
- アレハンドロ、リズベット・クラウン、レイリー・ハルティアを【シグルドリーヴァ】へ招集。
- オーディン、極秘にルサルカ、ナタリー、リズベットを指名し【姉妹】の保護命令を下す。
- ルサルカら、クラウディア・ブラフォード及びシーリーン・ブラフォードと邂逅。
- 【災厄のセカンダリー・ピラー】との3度目の戦闘。
- ナタリー・チェイス、自身の秘密を明かす。
- クラウディア、ワルキューレに志願。
- シーリーン、【ギャラルホルン】復元に手を貸す。
- 【ヴァイナハテン決戦】
- オーディン、【シグルドリーヴァ】及び【スヴェイズ】を与える。
- ルサルカ、大佐へ昇進し指令の地位へ。
- 戦後処理。
戦闘を軸に書き連ねましたがざっとこんな感じでしょうか。
それではいくつかの項目について掘り下げていきます。
エピソード
【戦翼の日】→【ファースト】率いる実験小隊への参加拒否。
ピラー相手に防戦一方を強いられる情勢下、ファースト・ワルキューレ、エイミーの登場により人類が初めてピラーに勝利した戦い。
当時は一軍人であったルサルカは同僚を一人残らず失い自らも生を諦めようとしたところに颯爽と現れた【英雄】に対し、決して口に出してはいけない一つの感情を抱いてしまいました。
「────どうして、あとほんの少しだけ、早く、駆け付けてくれなかったんですか?」(上巻p292)
エイミーのことは好ましく思いつつも【ファースト】を憎み続けていたルサルカは彼女と共に飛ぶことは選べず遂には翼すら畳むこととなります。
ここの葛藤はルサルカ最大の受難でしょう。【ファースト】の能力への嫉妬も多少はあったかもしれませんが、彼女が首を縦に振れなかった最大の要因は客観的に見ればどうしようもなく身勝手な憎悪。エイミーにとってルサルカは【戦翼の日】の生き残り唯一のワルキューレとして誰よりも近しく想う存在であっただけに、上記のセリフはあまりにも無神経であることはルサルカ自身すらも認めていました。
しかし、ルサルカにとっての【戦翼の日】とは人類が輝かしい第一歩を刻んだ日ではなく同僚を一人残らず失った日です。エイミーが悪いわけないとは重々分かっていながら、その日を象徴する存在と一緒に空を飛ぶことはできないという負の感情を鉄仮面の奥に燻ぶらせ続けていたという人間性、この不器用さがルサルカの大きな魅力だと思います。さらに、この一連の葛藤をエイミーは全て見通したうえでルサルカに懐いていたというのがもう。助けてください。
【パンドラの悲劇】
ファースト・ワルキューレことエイミー以下、ルサルカの部下であったセネア・スティングル、ヴィクトリカ、カナン、全員死亡。
え?
史上初のセカンダリー出現。あれだけ無双ぶってたエイミーが文字通り死力を尽くして相打ちという絶望感たるや。セネアちゃんはめっちゃ可愛い挿絵もらってるし亡くなるにしても終盤かなと思っていたので不意打ちもいいとこでした。
セカンド世代のエースだったルサルカの作中の戦闘描写を鑑みると、良くてセカンドの中の上だった3人ではセカンダリーに太刀打ちできないのは妥当。(むしろ後半のルサルカが頑張りすぎてる。)
【ラミアの奇跡】
パンドラの悲劇により人類終了ムードが流れるのを阻止せんと若干イカサマを使いながらも成し遂げられた奇跡。
本件の立役者である奇跡の代名詞ことアレハンドロ・オストレイ。マジで生まれてから死ぬまでず~っと奇跡起こりっぱなしの確変おじさんでしたね。ファースト・ワルキューレと同じくらい人類に貢献していたと思います。
作中で結構ご都合の化身だったけれどそもそもオーディンがご都合マシーンとして定義されているので「ご都合だろ!」って文句が通らないのが本作の良いところですよね。多少ご都合発動しないと人類ワンパンされるしゲームバランス的に構わないと思います。
★ルサルカ営倉篇★
初見時はルサルカがポケモンすぎて困惑止まらなかったんですけど、落ち着いて彼女の立場に立って見てもそれでもポケモンでは?と感じざるを得ないエピソードでしたね。
エイミーと空を飛ばない選択をした結果、また一人になったことで翼を畳むところまでは理解できるメンブレの範囲ですし愛おしいとすら思います。けど、『軍からの命令行動中に酒場に立ち寄って、初めての飲酒体験でガバガバ飲んで、自ら翼を畳んでおきながら「私はワルキューレです」と絶叫しつつ民間人20人張り倒す』のは軍規違反云々以前に人としてポケモンすぎるでしょw
これには流石のオーディンもドン引きしてたと思いますが、結局処分は多少の謹慎だけでお咎め無しも同然という。ワルキューレとかいう組織の治外法権っぷりは是正の余地ありだと思わざるを得ませんね......。*1
【ハンブルク基地攻防戦】
セカンダリー、強すぎ......。初撃による予想外の制圧には心臓止まるかと思いました。戦闘スタイルだけ見たら【ヤドリギ】よりもこのカマキリ型*2の方が印象深いですね。そしてこの戦闘において特筆すべきはやはりルサルカの帰還。地上でも空でも汚名返上とばかりに大活躍し、奇しくも【戦翼の再来】と呼ばれる歴史を紡いだ功労者となります。
ルサルカはセカンドという都合、サードと比べワルキューレとしての適性ひいては戦闘力で明らかに劣るにも関わらず経験値と戦略でカバーしていくベテラン感が見ていて小気味良いです。そしてそれだけ頑張っても無双には至らず、せいぜいサードと同じかやや劣るくらいの成績という塩梅が素敵。ただ隊長としての腕は天下一品で、連携指示を出しセカンダリーを攻略していくシーンは痛快そのものでした。
【シグルドリーヴァ】結成
対ピラー戦線を押し戻す反撃の嚆矢とすべく結成された戦乙女小隊【シグルドリーヴァ】*3の隊長として、ハンブルク基地攻防戦の功績からルサルカが任命されます。
これが最初のシグルドリーヴァということになりますが、現在のアズズたちが属するのが909部隊ということで、時の流れを感じますね。*4
こっちでもしっかりとタイトルに強い意味持たせてるのアッチ~~~!!っつってたら下巻でさらに回収してきてひっくり返りました(後述)。
【シグルドリーヴァ】の再生
アニメ1話で登場した残り2人のネームド、リズベット・クラウンとレイリー・ハルティアの若かりし姿が登場します。といっても、本編では1話冒頭の僅かなやり取りでしか出てこないのでこちらがメインと言っても今のところ差し支えありません。
リズは短気で脳筋寄りに見えて意外と戦闘センスが鋭いタイプ、リリーはよくも悪くも優等生気質といったあるあるなキャラクターをした両者ですが、初期のリズは非常に視野が狭く協調性に欠けていたためオーディンから「死んでもいいワルキューレ」に数えられていたというのは少しかわいそうでした。
★ブラフォード姉妹スカウト篇★
シーリーンとかいうアニメで影も形もない存在自体がネタバレみたいなやつ登場してひょえ~ってなりました。かわいいし......。
姉妹の【能力】についてちょっと考えます。
シーリーン・ブラフォード
読心スキル及びピラー出現に連動するナルコプレシー持ち。エイミーもほぼ確定で読心持ちなので神性が高い(オーディンの見込みがある)と心が読めるみたいな感じなのか、はたまた血族の特性か。アレハンドロもルサルカの心の引用を引用していたので血に匂いはついていますが、確変おじさんは存在自体イカサマだから参考にしづらいところです。とはいえ予言めいた遺言を残していた父親のこともありますし血統由来と考えるべきでしょうね。
クラウディア・ブラフォード
無限の体力持ち。ワルキューレ適性・戦闘力は【ファースト】に匹敵しうるらしい。妹が特殊なら姉は物理みたいな設定ですね。
この姉妹の能力については【ネームド】はおろかワルキューレになるより以前に発揮されているので、【シュヴェルトライテ】の名をもらったことでさらに何か能力を有しているのではと思いましたがこの辺ちょっとモヤモヤしてます。
というのも、アルマが【神の目】に目覚めたのは英霊機をもらったのと同時期で、彼女が【スヴェイズ】をもらうよりはるか昔の話です。オーディンが「称号のようなもの」と言っている上に【シグルドリーヴァ】との比較があるため、やはり名前を与えたことで能力を付与している説もありえますが、その場合クラウもアルマも2つずつ異能を有していることになり少々バランスが悪い気がします。元から特別な娘にさらに特別な何かを授けるのかなぁと。
しかしアニメでの描写からそれっぽい候補も存在しており、
・三度きりの魔弾 (モンブラン戦にて言及)
・第六感 (敵攻撃の予知を行なっている)
・何か翼が生えるやつ(突貫性能)
あたりが挙げられると思います。魔弾は単なる装備であってクラウ当人の能力ではないと解釈できるし第六感はワルキューレ 全般にそれらしい描写が存在するので微妙かなとも感じますが、最後者については2話のアズとのやり取りからするとネームドの能力と見るべきな気がします。
【ヤドリギ】の告白
ナタリー・チェイス。
【ヤドリギ】の攻撃から味方を庇い完全に逝ったと思ったら生きてたものの、実は以前から寄生されており余命間もない状態だったとかいう悲劇のヒロイン。
周りに心配させないようにと口を噤んでいましたが、彼女自身の恐怖を考えると辛くて辛くて仕様がなくなっていました。
誇り高く人情に厚く、悪いものには悪いと言えてしっかりめの赤面もできるという、いかにも知り合いのオタクが好きそうなタイプでした。ちなみに僕も好きです。
【ギャラルホルンの復元】
「神話の世界に片足をつっこむの」(下巻p213)
いわゆる「ガチでヤバいこと起きた」というヤツでした。
シーリーンが登場して以来の違和感。なぜ彼女はアニメにまるで存在しないかのような描写をされているのか。
彼女は人類の反撃の狼煙たりえる神器【ギャラルホルン】復元の礎となるべく人の世を離れ、世界中の人々からその存在の記憶を消されていました。
ただ一人、彼女を人間界に繋ぎとめる【楔】を任された人物を除いて。
初対面時にワルキューレに対し辛辣だった彼女が神器生成の贄になることを受け入れるまでの描写が少なかったのですが、元から『ピラー以来たびたび悪夢を見させられている』『悪夢から目覚めた瞬間他の人間の悪感情がなだれ込んでくる』という過酷な生活により重度のメンヘラになっていた様子が伺えますし、『長らく最愛の姉を騙していたことがバレた』という特大鬱トリガーもありました。したがってシーリーンの人柱志願はクラウのワルキューレ志願と同じくらい自然な展開だったと思います。
繰り返しになりますがシーリーンは重度のメンヘラであったと確信しています。救いたかった。
ともあれ、ギャラルホルン誕生の経緯はシーリーンの存在そのものと等価でありRusalka篇における一つの目玉だったと思います。クラウが彼女のことを思い出すイベントは鉄板ですがアニメでもやるだろうと思うのでその辺でスカウト時とかのフラッシュバック来ないか楽しみに待っています。
【ヴァイナハテン決戦】
今作における最終決戦。
セカンダリー【ヤドリギ】は迫力面では欠けますが、ピラーの根本的弱点であるスタミナ切れを無視し、戦いながら回復してくる上にワルキューレ以外に対しては相当の射程を有し問答無用で神木化させてくるというチートピラーでした。
戦闘においては無数のターシャリに加え護衛のセカンダリーまで出現し、あの確変おじさんですら頭を抱える始末となります。
苛烈を極めた戦いは、ルサルカの根性や新世代の活躍、そしてアルマによって......。
アルマ............。
ナタリー..................................................。
ラストフライトについては議論の余地がありそうですが僕は本人の意思で飛んで来たのだと解釈しています。
【戦翼のシグルドリーヴァ】
────ルサルカ・エヴァレスカ、多くのワルキューレの長女となった彼女こそが────、
「────戦翼の、シグルドリーヴァ」
「少佐、あなたこそが希望の体現。あなたこそがワルキューレたちの指針。あなたこそがわたくしたちの理想。────あなたが勝利をもたらす戦乙女、シグルドリーヴァですわ」(下巻p283)
最初は部隊名として登場した"シグルリ"。その真意は【戦乙女の長女】。
本来、エイミーには同一の意味を持つ【ブリュンヒルデ】の名が与えられる予定でしたが彼女はその前に戦死してしまいました。そこでルサルカを長女の器であると認めたオーディンは、他のネームドと異なり特別な加護は宿らないながらもブリュンヒルデの別名である【シグルドリーヴァ】を与えます。
神にすら認められたルサルカのワルキューレとしての生き様ですが、彼女は決戦の補給時に他の戦乙女からも慕い尊敬されていることを口々に明言され、アレハンドロからも長女と形容されます。さらにはシーリーンからも、「見届ける人」という表現で優しく見守ってくれる存在みたいな見方をされていたと思います。
おわりに
本作を読みながら脳裏にちらつく作品がありました。
のわゆとわすゆ。
【現在】のように体制が整っておらず、常にギリギリの対応で火事場をしのぐ激戦の連続。今となってはそこそこ相手できるようになってきた敵に対し、当時の最高戦力でも命を賭す羽目になる圧倒的劣勢。今の環境が得られているのは間違いなく昔を戦い抜いた英雄たちのおかげだという構図は勇者の系譜に近しいものがあると感じました。ギャラルホルンは神樹の結界や勇者システムに、シーリーンは高奈に通じるところがあります。少女を戦わせなくてはならない状況に大人が罪悪感を感じるというのも同様ですね。
さて、アニメ本編との横断性を考えるとやはり妹の記憶を失いながらも新たな居場所で戦うクラウが一番気がかりです。彼女が欧州戦線で戦い続けるうちに死神扱いされるようになったのは悲劇ですが、最大の悲劇はその戦いに身を置く原初の理由を当人が忘れているということでした。神は哀れな人間を好む傾向にありますが、事情を分かったうえでクラウを『死神』と呼び可愛がっているオーディンはだいぶ悪趣味ですね。館山の萌え娘たちがクラウをどこまで救いきれるのか期待したいところです。
館山の彼女たちについて、個人の見解として宮古は相当戦死しそうだと思ってるんですよね。アズズは見送る者の風格が出ている(将来的にルサルカの後任が似合いすぎている)と感じますし、園香が戦死するようなことがあればもう希望を信じることができなくなってしまいます(俺が)。よって、誰か一人が倒れるなら彼女かなと......全員生存が一番めでたいんですけど、パンドラの悲劇みたいに多分ここからも唐突なピラーの成長などによるシビアな展開があると予感しています。
本作主人公、ルサルカ・エヴァレスカに戻ります。
サードにもファーストにも遠く及ばない戦闘力ながら最前線で統率を行い妹たちを牽引した【長女】。人類のため身を神に捧げる妹の記憶を一身に背負った【長女】。親友を手ずから殺め心を失いかけた少女に戦うための怒りを与えた【長女】。脆いわけではないが固いということもない人並の精神力のもと、ファースト、セカンド、サードとあらゆる世代のワルキューレを見送り続けてきた【長女】。
ここまで【戦翼のシグルドリーヴァ】を体現した人物が未だ1話のワンシーンにしか登場していないのが信じられず、かれこれ30回くらい該当シーンを見返しています。
この重厚な背景を活かしきってほしいという気持ち。毎週ワクワクが止まりません。
Sakura篇読んでまた感想投げるかもしれません。最後まで読んでくださった方、長々とありがとうございました。